ゾクチェンの教えを日本で伝授している箱寺です。ゾクチェンの教えやチベット瞑想について執筆しています。よろしくお願いいたします。
昨日は久しぶりにテレビに見入ってしまいました。夜テレビ朝日で放送された「天空のヒマラヤ部族」です。あなたもご覧になりましたか?「部族」って言葉にはちょっと引きますが、とても素晴らしい内容でした。
このテレビ番組はネパールの北西部にある「ドルポ」地域を取材したドキュメンタリーです。ドルポはかつてはチベットの一部でしたが、ネパールとの戦争に負けて、ネパールに併合されてしまいました。
そうした経緯で現在はネパールの一部ですが、住んでいる住民はチベット系の人々、話す言葉もチベット語の方言、信仰もチベットの宗教です。つまり完全なチベット文化圏なのです。
チベット本土は中国共産党や人民解放軍により、文化や信仰がズタズタに破壊されてしまいました。一方でそれよりも早くチベットから分離した地域は、文化や信仰が今でもほとんど無傷で残っているのです。北インドのラダック、ブータン王国、そしてドルポなどです。
チベットやチベット文化が好きな人なら、ついついチベット自治区の方に意識が向いてしまうことだと思います。でもドルポもとても魅力的な土地と人々です。このドルポには、じつはたくさんのボン教徒が住んでいます。
昨日のテレビ番組では、はじめに大きな湖が出てきました。これは「ポクスンド湖」で、ここには四つのボン教僧院があると聞いたことがあります。そのうちのひとつの僧院に取材班は訪問していました。
この僧院で取材の安全を祈願してもらったとのこと。奥で太鼓をたたくお坊さんも、手前でシンバルをたたいているお坊さんも、私がよく知っている方々です。このポクスンド湖のお坊さん方は、意外なことに親日的です。
なんでも彼らが子供の頃、日本のテレビ局がこの地域に取材に来たことがあるとか。また番組の中で、この僧院の天井が映し出されました。そこにはたくさんのマンダラのプリントが貼られていました。
「あっ!これはみんぱくで調査のために制作したマンダラだ」と私はピンときました。経済上の理由から天井に描かれたマンダラの仏画を修復するかわりに、マンダラのプリントを張っているのです。
1990年代後半に大阪にある国立民族学博物館の依頼により、かなりの枚数のボン教のマンダラの仏画が作製されました。このマンダラの仏画は、世界中さまざまなところで利用されているのを目にします。ポストカードにもなっていて、ときどき私のオンラインショップでも販売しています。(現在は品切れ)
番組の終わりにはツァルカ村がちらっと紹介されました。番組では触れられませんでしたが、この村のほとんどの住人がボン教徒。このツァルカ村も日本と縁のあるヒマラヤの村です。私の友人のヤントンさんも、ツァルカ出身のボン教のゲシェ(仏教博士)です。
1953年のマナスル登山隊と同時にネパールに入った科学班が、このツァルカ村を調査しているのです。このときの調査については、川喜田二郎著「鳥葬の村」に詳しく書かれています。ボン教についても話も出てくるので、ぜひ読んでみてください。
それではまた!
コロナウイルス感染予防のため、ボン教ゾクチェンのちいさな瞑想教室は5月末までお休みをいただきます。それまでのあいだ、有料のオンライン教室をぜひご利用ください。ご理解とご協力をお願いします。