ゾクチェンの教えを日本で伝授している箱寺です。ゾクチェンの教えやチベット瞑想について執筆しています。よろしくお願いいたします。
1995年の春に私がカトマンズのボン教僧院に出入りしはじめたころ、ひとりのアジア人に出会いました。彼は40歳過ぎ位の年齢で、黒い頭髪をしてすらっと長伸長の人物。短髪とよく似合う黒縁のメガネが知的な雰囲気を醸し出していました。
「彼も日本人だから日本語で挨拶してみなさい」とヨンジン・リンポチェは私に英語で話しかけました。そこで私は日本語で「こんにちわ。日本のどちらから来たのですか?」とそのアジア人に話しかけると、彼は困ったような顔で「私は韓国系アメリカ人です」と英語で答えてきました。当時からヨンジン・リンポチェはとてもいたずら好きなラマでした。
なんでも彼は高校生のころ韓国からアメリカに渡り、それ以来アメリカで建築家として活躍しているとのこと。彼がこのボン教僧院に尋ねてきた目的は、「暗闇の修行」するためだとか。
「暗闇の修行」とはゾクチェン瞑想でおこなわれる独特な修行で、まったく光が差し込まない暗闇の部屋の中に何日もお籠りする秘伝中の秘伝の修行。ネパールに出発するまえから、暗闇の修行の話を私は小耳にはさんでいました。でも、まさか外国人が暗闇の修行をしているなんて想像もしてなかったので、彼の言葉に私は腰を抜かしそうになるほど驚きました。
しかも話を聞いてみると彼はボン教徒でもなければヨンジン・リンポチェの弟子でもないとのこと。彼はナムカイ・ノルブ師の弟子だという。ナムカイ・ノルブ師は数年前に遷化されたベット仏教ニンマ派の著名な活仏で、たくさんの西洋人の弟子がいた。
彼は一週間ほどこのボン教僧院で暗闇の修行をしたあと、私が知らない間にアメリカに帰国していました。そのあとさらに何人かの西洋人がこの僧院を訪問しましたが、その誰もがナムカイ・ノルブ師の弟子で、暗闇の修行を体験するためにこの僧院を訪れたのでした。
当時は学術研究者以外でボン教に興味を持っている人なんてほとんどいなかったので、外国人がこのボン教僧院を訪れることは稀でした。その稀に訪問する外国人は皆ナムカイ・ノルブ師の弟子で、しかもまるで口をそろえたように彼らの目的は暗闇の修行を体験することだったのです。
まだゾクチェンのことを何も知らなかった私は、「暗闇の修行をするなんてどの西洋人も瞑想のエキスパートにちがいない。すごいな~」って羨望の眼差しで彼らを見ていました。ハハハ、当時の私はなにも知らなかったのです。懐かしい思い出です。
この暗闇の修行をするためには、まったく光が差し込まない特殊な修行部屋を用意しなければなりません。私が長らくお世話になっているボン教のティテン・ノルブッツェ僧院には、その修行部屋が設置されています。
その修行部屋のようすをはじめて動画でご紹介します。おそらく動画で紹介されるのは日本で初めてのことだと思います。撮影に協力してくださったボン教のお坊さん方に感謝を申しげます。
また暗闇の修行について知りたい方は、『ゾクチェン瞑想マニュアル』をお買い上げください。暗闇の修行について事細かく書いてあります。
それではまた!
コロナウイルス感染予防のため、ボン教ゾクチェンのちいさな瞑想教室は5月末までお休みをいただきます。それまでのあいだ、有料のオンライン教室をぜひご利用ください。ご理解とご協力をお願いします。